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そのとき全身に強い衝撃を感じて、俺は思わずよろめいた。
何とか踏み留まろうとしたものの、勢いがつきすぎて止まれない。そのまま前のめりに倒れ、地面の上を転がった。
……shucks。何とかアスファルトに手をついて体を起こしたものの、走りすぎたのか何なのか、頭がぐらぐらして立ち上がれない。
「おい、お前! どこ見て歩いてんだ!」
品のない怒声が聞こえた。立ち上がれないまま振り向くと、背後に見知らぬ2人の男がいる。
どちらもスーツに黒い外套姿の男だった。そのうちの1人がおもむろに腰を屈め、地面から何か拾い上げている。
隣の若い男が被っているのと同じ、黒の中折れ帽だった。どうやら俺はそちらの男と激突してしまったようだ。その拍子に帽子が落ちたのだろうが、しかしそのとき、俺は猛烈に気が立っていた。
そう、何故か猛烈に気が立っていたんだ。
制御できない核ミサイルを腕の中に抱いている気分だった。
そしてその核ミサイルは、若い方の男が上げたヒステリックな声で起爆した。
あのとき爆発した感情を何と呼べばいいのか、俺は今もその名前を見つけられずにいる。
「うるせえ! そっちこそちんたら歩いてんじゃねえよ、ホモ野郎!」
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