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地面に腰を抜かしたまま――なおかつフランケンのマスクを被ったままというあまりにもお間抜けな格好で、腹の底から俺は叫んだ。
とにかく叫んで、叫んで、叫び倒して、腹の中で暴れ回っている正体不明の感情をぶちまけてしまいたかったんだ。
だがその欲求に素直に従ったのがまずかった。俺の放った〝ホモ野郎〟という侮辱語を聞いた若い男が、帽子の下で顔色を変えた。
その瞳がみるみる怒りに染まり、懐から何かを掴み出す。
ほんの一刹那の動作で俺に向けられたそれは――拳銃。
俺が目を見開いたそのときにはもう、男の指は引き金にかけられていた。
乾いた銃声が2発。
いや、それは〝銃声〟と呼べるほどたいそうなものじゃなかった。
プシュッ、プシュッと、気の抜けるような音が2回響いただけ。
直後に目の前の男が2人、胸から血を噴いて倒れた。
男のオートマチックがアスファルトの上を滑り、ざらついた音を立てて俺の前で止まる。
その銃に一瞬目を落として、それから茫然と顔を上げた。
倒れた2人の男の背後、約30フィート。
そこにやたらと銃身の長い、細身の拳銃を構えた男が1人。
Fartだった。
Fartはじっと銃を構えたまま、何も言わずに俺を見ていた。
パタッと小さな音がして、地面に転がった銃に水滴が落ちる。
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