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映画の中の彼らはいつだって過激な立ち振る舞いで俺を魅了し、何ものにもとらわれずに生きることの素晴らしさを教えてくれた。ときには絶対的正義の象徴である警察や当局との死闘を繰り広げ、そんなくだらない偶像はぶち壊せと俺を煽り立てた。
果たしてその影響なのかどうか。
いつしかティーンエイジャーの俺は一流の殺し屋になることを夢見るようになっていた。
この息苦しいばかりの世界を、己の手でぶち壊す力がほしかったのだ。
どんな巨悪も、あるいはどんな正義も指先1つで屠れるほどの殺し屋になれば、きっとそんな力が手に入ると思った。俺はその空想を熱狂的に信奉した。
あれは、そう。
そんな17歳の秋のことだ。
貴重な秋休み初日。俺はまるで生まれる前からそうするよう神に命じられていたかのごとく、早朝から『Cinema Anthony』へ足を向けた。
イカした落書きまみれの地下鉄に乗り、ブリーカー・ストリート駅へ。今日は昼を挟んで観たい映画が2つある。1つは2人の殺し屋が殺人事件を目撃した少年を誘拐する話。もう1つはマフィアたちのドロドロした駆け引きや抗争を描く暴力映画だ。
俺は乗車駅で買ったターキー・ブレストを頬張りながら、家から持ち出してきたニューヨーク・ポストを眺めて本日の上映スケジュールを確認した。今から行けば前者の最初の上映には間に合うだろう。
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