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まったく妙な話だ。ティーンエイジャーの頃は殺し屋やマフィアといった裏社会の男たちが活躍する映画ばかり観ていた俺が、最近ではこうしたスパイもののサスペンスばかり観ている。
主人公は大抵元CIA局員や軍人で、彼らが知恵や技術を駆使して社会の悪と戦う話だ。俗に言う〝勧善懲悪〟ってやつ。
今回の作品も最終的には元CIAの工作員が主人公の味方について、裏でコソコソ悪事を働いていたNSAの幹部をとっちめる。実に分かりやすい話だ。
自分の嗜好がいつ、どうしてそういう方向にシフトしたのかは俺にも分からない。
ただ、10代の頃に感じていた閉塞感は今も俺の肺を満たしていて、どこにいても息苦しいような、暴れ出したいような、そんな気分をいつも抱えていた。
まったくクソッタレな気分だ。
結局俺はどんな選択をしようと、生きている限りこの現実からは逃れられないのかもしれない。
気が遠くなるほど遠い昔、「人間は生まれながらにして死刑囚である」なんて言った哲学者がいたらしいが、まったく言い得て妙なりだ。
俺たちはこの世に生を受けた瞬間から現実という牢獄につながれ、ただ審判のときが訪れるのを待っている。その真実に気づき、逃げ出そうと足掻いても、俺たちをつなぐ運命の鎖が切れることは決してない。
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