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「俺も詳しくは知らん。ただ、若い頃にボスが拾って育てた男だったそうだ。恐らく目をかけていたんだろう」
「へえ。なのに手を噛まれた、と」
「そのボスももうそう長くない。支度ができたらすぐに出発しろ。ボスの心臓が止まってから標的の頭を撃ち抜いても、弾代は出ないぞ」
じろりと横目で俺を睨んでからそう言って、男はほどなく席を立った。
俺はその黒い背中が扉の向こうに消えるのを見送り、今度こそ本当に舌を打つ。
腐れ野郎め。そんなに金と跡目が欲しいなら、ちったぁてめえの足で稼げってんだ。それを毎度毎度体よく俺に押しつけやがって、気に食わねえ。
俺はそのどうにもならないイライラを、更にフレンチフライを貪り食うことでどうにか消化しようとした。
だがこの量のフレンチフライはさすがに胃にもたれる。昔はこのくらいの量なら平気で平らげていたのに、今では上映終了後に持て余して捨てる始末だ。
だったら初めから買わなければいいのだが、どうにも昔からの習慣でこのサイズのものを買ってしまう。
まったく進歩してるんだかしてないんだか。
俺は自分で自分に呆れながら、ついに無人のシアターを出た。
そこはかつて俺が足繁く通った『Cinema Anthony』があった場所。
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