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 高校は中退し、両親からは縁を切られて、つるむべきでない連中とつるんだ。しかしクスリはタダで天から降ってくるわけではなく、気が狂いそうなほどの苦痛と幻覚から逃れるためには、何に手を染めても金を手に入れなければならなかった。  その当時の俺たちにクスリを回していたのがピンツォーロ・ファミリーだ。  借金するアテもなくなり、ついに万策尽きた俺が売人の膝に縋って「何でもする」と懇願すると、やつらは俺に1挺の拳銃を手渡した。  最初に殺せと言われたのは、余所の組織にピンツォーロの情報を売っていた馬鹿な売春婦(おんな)だ。俺はその女を0.1インチのためらいもなく殺した。そして報酬にクスリをたんまりいただき、晴れて10代の頃の夢も叶った。  そう、俺は殺し屋になったのだ。  ファミリーの汚れ仕事をひたすら請け負う殺し屋に。  まさか自分が本物の殺し屋になってしまうだなんて、あの頃の俺が想像しただろうか?  しかも夢見ていた孤高の殺し屋とはほど遠い、ケチなマフィアの飼い犬になるなんて。  きっかけになったクスリは死ぬ思いをしながら自力で抜いたが、それで組織からも抜けられるほど世の中は甘くなかった。  かくして俺はずるずると深みにハマり、今もこのアリ地獄から抜け出せずにいるというわけだ。  おまけに唯一の慰めである映画鑑賞すら、最近ではああして邪魔される。     
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