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「信用してほしいならそろそろペンネームくらい明かせばいい」 「その手には乗らん。だいたいお前も殺し屋志望なら、それくらい自分で調べてみろと言ったろう。お前、もし雇い主にエドという男を殺せと言われたら、アメリカ中のエドを殺す気か?」  俺はそっぽを向いて舌打ちした。このオッサンはいちいちイギリス人みたいな皮肉を返してきやがる。  俺が〝Fart〟と呼ぶこのオッサンは自称小説家。毎日のように映画を見ないと自作のネタを拈り出せないというアイディア欠乏症に(かか)っているらしく、いつもブロードウェイ周辺をうろうろしている。  その中でも『Cinema Anthony』はやつのお気に入りだとかで、俺がこの映画館の存在を知った頃には既にここの常連だった。だから何かと先輩面で能書きを垂れてくるのだが、正直俺はそれがうざったくて仕方ない。こいつさえいなければここのシアターはほぼ毎日貸切りと言ってもいいのに。まったくこの老いぼれは、どんだけ暇なんだか。  まあしかし老いぼれとは言っても、この劇場の妖怪(モンスター)であるカウンターのばあさんほどヨボヨボじゃあない。     
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