思い出のカレーライス

17/22
1867人が本棚に入れています
本棚に追加
/262ページ
「申し訳ありませんが、お教えできません」 「そんなっ……どうして」  思わず大きな声を出したぼくに、くるりがびくっと身を震わせる。 「渉くん。気持ちはわかるけど、落ち着いて。どうしても教えられない事情があるんだ。僕たちだって、意地悪で隠してるわけじゃない。凪子さんから頼まれているんだよ。絶対に、自分を探させないようにして欲しい、って」  この手紙を読んでごらん、と高岳先生に促され、ぼくは叔母からの手紙を開いてみた。桜色の便せんに丸っこくて愛らしい字が並んでいる。 『渉ちゃんへ。   大変なときにそばにいてあげられなくてごめんなさい。事情があって私は遠い場所に行かなくてはなりません。後のことは高岳医師と弁護士の伊沢先生に託します。どうか、あなたが目を覚まし、無事にこの手紙を手にすることができますように。あなたが幸せな人生を歩むことができるよう、心から祈っています』  手紙に記された日付は、今から十年前。ぼくが事故に遭った一ヶ月後に書かれたもののようだ。 「叔母はどこにいるんですか。お願いですから、教えてください」  どんなに頼んでも、伊沢さんも高岳先生もなにも教えてはくれなかった。 「こんなもの……渡されても困ります」     
/262ページ

最初のコメントを投稿しよう!