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 鏡の前で、シュッと紺のネクタイを締めた。  同じ色の、袖に黄色いラインの走った上着をまとい、ボタンを閉める。  サイドテーブルに置いていた制帽を取り、部屋を出た。  燦々と朝日が射し込むキッチンでは、妻のアイリーンが朝食の支度をしている。  ベーコンの焼ける匂い。  レタスを刻む音。  ドリップマシンから立ち上るコーヒーの香り……。 「おはよう、アイリーン」 「あら、おはよう、マイソン。ジョーイを見なかった?」 「いや、見てないが。もう起きてるのか?」 「さっき起こしに行ったんだけど。今日はあなたがあの子を送ってくれるって約束でしょ?」 「ああ。だがまだ六時半だ」 「ダメよ。あの子、早めに起こさないとのんびり屋さんなんだから」  苦笑しながらそう言って、エプロン姿のアイリーンは一度キッチンを離れた。フローリングを鳴らしながら廊下へ出ていき、白い階段の下から息子(ジョーイ)を呼んでいる。  マイソンはそんな妻の、白いうなじから零れた後れ毛を後目に見ながら、彼女が用意していたベーグルにベーコン、チーズ、そしてレタスを挟んだ。三人分。     
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