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 完成したベーグルサンドをスクランブルエッグが乗った皿に置き、テーブルに並べる。戻ってきたアイリーンがそれを見ると微笑んで、頬に軽くキスをした。  花柄のクロスがかかった丸いテーブルの席に着く。長い足を組み、テーブルに置かれていた新聞を広げた。  今朝の朝刊は、昨夜ヨーロッパで起きたというテロの話題で持ちきりだ。マイソンは妻が差し出してきたブラックコーヒーを啜りながら黙って見出しに目を落とす。物騒な世の中になった。いや、マイソンの知る限り、世界は元々物騒で救い難いものだったけど。 「ねえ、マイソン。仕事のことだけど……」  と、ときに向かいの席へ腰かけながらアイリーンが言う。その不安げでどこか哀願めいた眼差しに、マイソンは小さく笑った。 「昨日も言ったろ。気持ちは分かるが、俺は辞めない。今更交替はきかないし」 「でもその記事、見たでしょ?」 「見たけど、それが?」 「それが? って、他人事じゃないのよ。あなたにもしものことがあったらジョーイはどうなるの?」 「アイリーン。一つ誤解してるようだから言っておくが、俺が今の仕事を辞めたらテロが起きなくなるか? そうじゃないだろ。最近のニュースを見る限り、テロの標的になってるのは何もヨーロッパだけじゃない。アメリカにいたって、いつ、どこで、誰がテロの標的になるか分からないんだ。あの9.11みたいに」     
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