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 なあ。  なあなあなあ。  騒ぐなよ。騒ぐなったら、おい!  ああ、よし。  ようやく大人しくなったな。いい子だ。  俺は聞き分けのいい女は好きだぜ。  だから次は殴られる前に聞き分けな。  で、ようやく本題に入れるわけだが。  お前、ケビン・ヘインズって男を知ってるな?  ……知ってるだろ?  なあ、おい。  なに黙りこくってんだ。  また殴られたいのか?  俺は、ケビン・ヘインズを、知ってるか、と訊いてる。  そんなに難しい質問か?  “Yes”か“Of course”、どっちか選ぶだけだろ?  ハハハ! シラを切ろうったってそうはいかねえ。  もうここにいる全員が知ってんだ。  お前がケビン・ヘインズの情婦だったことはな。  だいたいなぁ、お前みたいにろくに働き口もないシングルマザーが、こんなご立派な住宅街に一軒家を構えてるってだけでまず怪しいだろ。  金は? ガキの養育費はどこから出してる?  隠れて売春(ウリ)でもやってんのか?  お前、元はシカゴの娼婦だもんな。  ……何だよその顔?  なんでそんなことまで知ってるのか、って?  ハハハハ! 当たり前だろ、俺らを誰だと思ってる?     
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