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少年は初め、その二つの異なるパズルに没頭した。ジグソーパズルの方は完成した絵を覚えてバラバラにし、ルービックキューブも男にやり方を教わって六面すべての色を揃えるのに挑戦した。
が、ジグソーパズルの方は二日で完成し、ルービックキューブに至っては難しすぎて途中で飽きた。
そんなわけでここ数日の少年の楽しみは、もっぱら男が貸してくれたポータブルテレビだけになっている。まるで無骨な無線機みたいな形のそれはかなり昔のもののようで、画面は呆れるくらい小さく、しかもモノクロだった。
しかしそんなものでもないよりはずっとマシだ。少年はすぐに動物が主役のアニメーションや、コメディアン、手品師などが多数出演するバラエティ番組の虜になった。内容が難解でよく分からないニュース番組やドラマ、ドキュメンタリーまで、食い入るように見るようになった。
その晩も、少年は味気ない裸電球に照らされた部屋で、ぼろぼろのベッドにうつぶせてアメリカの国勢について熱弁する有識者たちの討論を眺めていた。当然ながら話の内容はまったく頭に入ってこないが、それでも人の声がするのとしないのとでは心持ちがずいぶん違う。
たとえそれが画面の向こうの、まったく知らない赤の他人のものであっても、少年は構わなかった。黄色いシミだらけの枕に頬を預け、スーツ姿で互いに議論を戦わせている初老の男たちをぼんやりと眺める。
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