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その日、お昼前に大学から携帯に着信があった。
当時、私は大学生だった。
地元とは離れたある県で一人暮らしをしていた。
その日は昼からの講義だったため、午前中は遅めに起きゆっくりと朝食を食べたり支度を整えたりしていた。
そんな最中のことだった。
通話ボタンを押すと大学の職員が少し焦った様子でこう問いかけてきた。
「地元の方で強い地震がありましたが、ご家族と連絡は取れますでしょうか?」
その時テレビを点けていない状態だったため、なんのことか一瞬わからなかった。
「強い地震があったんですか?」
「はい、震度6強です」
その言葉を聞いた瞬間、一気に血の気が引いた。
これから連絡を取ると大学側に伝え電話を切った後、急いで実家に電話を掛けるが繋がらない。
心臓がばくばく鳴る。
家族は無事だろうか。
心配で身体が震えた。
お昼過ぎに大学で再び家族に連絡した。
ようやく電話が繋がり電話口から母の声が聞こえたとき、安心から涙が出そうだった。
「みんな無事だから大丈夫だよ」
心配する私を安心させるように大丈夫、と繰り返す母の声。
本当はこの時、2階から下に降りる際に足を怪我していたらしい。
後に姉から聞かされた。
家のことを聞くとほとんどの家具が倒れ物が散乱している状態だと教えてくれた。
心配しないでと切られた電話。
電話を終えた後も気が気じゃなかった。
大学の構内はいつもと同じようにたくさんの人の話し声や笑い声で溢れていた。
友達に地震のことを聞かれる。
家の状態を伝えると「そっかぁ。大変だね…」と心配してくれた後、またとりとめのない会話が始まる。
まるで自分だけ別の空間にいるみたいだった。
それからしばらく経った後、家が半壊だと認定され解体工事が決まった。
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