夢の中

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夢の中

それはいつの頃からか、時々私の夢の中に現れる風景だった。 気が付くと私はいつも桜の木の下にいた。とても大きいだとか、樹齢何百年だとかそういう特別神々しい佇まいをしている訳ではなく、どこかの学校や公園にありそうなよくある感じの一本の桜の木だった。その桜の木の他には特に何もないような場所で、時々風に吹かれながらたった一本だけそこに立っていた。夢の中に出てくるその風景は不思議といつも同じ場所だった。 そしてまた同じようにその夢を見たある日、私はその桜の木が本当にいつも同じ木なのかどうか確かめたくなって、自分が着けていたシルバーのペンダントを枝にぶら下げておいた。 夢の中で私がしていたペンダントには確か、何語なのかどういう意味なのかも分からないけれど”espoir”という文字が入っていた。 けれど、その次にその夢を見た時には桜の木にそのペンダントは掛かっていなかった。そして次の時も、その次の時も夢の中にペンダントが出てくることはなかった。それでも桜の木の夢を見ることは私の中ではどんどん楽しみになっていった。     
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