第一幕》濁り、雷鳴

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ひしひしと迫る死を自覚する中で、ずきんと胸の内で何かが疼いた。 自分とこの枯れかけの花が重なって見えた。 ──生きろ 死ぬな、死んではいけないと心の中でもう一人の自分が叫ぶ。 「──う、うぅ......」 呻き声を漏らし、全身に動けと命じる。 動け、動け そう念じ力を入れるとほんの僅かに腕が動いた。 腕を身体に引きつけ、ずるずると這うように動く。 石が腹を圧迫し、吐き気がこみ上げる。 まだ僕は死んでいない。
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