第一幕》濁り、雷鳴

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玄参(げんさん)は死体が重なる川辺を目の隅に、冷たい握り飯に食らいついた。 香魚(あゆ)の遊ぶ清流は今や錆色の水が淀んでいる。 「私利私欲の為にこれだけの兵が死んだのか」 水筒から薬草から煎じた茶を飲み、僅かとなった握り飯の残りを口に押し込む。 兵の死体は見慣れた。 しかし── 戦に巻き込まれた女子供の死体を見るのはやはり心が痛む。 玄参(げんさん)は目を伏せた。 咀嚼(そしゃく)していた握り飯を飲み込み、立ち上がった。 右耳の耳飾りがチリンとなる。 ──これは 僅かに鼻に死臭とは一線を画す香りを感じた。 玄参(げんさん)は面を上げる。 そして、獣のようにゆっくり鼻から大気を嗅ぐ。
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