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玄参は死体が重なる川辺を目の隅に、冷たい握り飯に食らいついた。
香魚の遊ぶ清流は今や錆色の水が淀んでいる。
「私利私欲の為にこれだけの兵が死んだのか」
水筒から薬草から煎じた茶を飲み、僅かとなった握り飯の残りを口に押し込む。
兵の死体は見慣れた。
しかし──
戦に巻き込まれた女子供の死体を見るのはやはり心が痛む。
玄参は目を伏せた。
咀嚼していた握り飯を飲み込み、立ち上がった。
右耳の耳飾りがチリンとなる。
──これは
僅かに鼻に死臭とは一線を画す香りを感じた。
玄参は面を上げる。
そして、獣のようにゆっくり鼻から大気を嗅ぐ。
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