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感じる。
気高く、それでいて甘ったるく無い凛とした香り。
しかし、玄参が求めている鬼染花の香りとは似て非なるものであった。
このような匂いだったか、あの華は。
匂いを追うように風上に顔を向けた。
更に濃く、花が香る。
その鳶色の目には川の中州、死体の小山が映った。
死体に咲く新しい花でもあるのか、と玄参は皮肉っぽく笑うと木箱を背負った。
(たまには変わった花を探すのもアリか......)
堤を一気に降り、ばしゃばしゃと血の混ざる錆色の川を渡る。
死体をつつく烏など御構い無しにずんずん進むと、足をはたと止めた。
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