第一幕》濁り、雷鳴

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上流の方にどす黒い雲が立ち上っている。 閃光がほとばしった。 まもなく嵐が起こるだろう。 早くしなければ、玄参のいるこの中州も沈む。 このおびただしい死体も川下へと流されるに違いない。 死体が流されることに関しては何とも思わないが、珍しい花が流されるとなると話は別である。 もう一度辺りを見渡す。 次第にあの匂いも薄れつつあった。 「どこにある──」 ふと玄参の視界の端に動くものを捉えた。 僅かな息遣いが耳に触れる。 玄参は息を潜め、腰の短刀を抜き構えた。 (まさかな......) 華の匂いに誘われ、のこのこと中州まで来たが、戦死体には烏だけでなく、その品々を狙う盗人が潜んでいる可能性があることを失念していた。
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