5人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
「いるなら出てこい」
玄参は一つ呼吸を置き声を凄ませる。
一拍間を置いて、声に応じるように、馬の骸からよろよろと小さな影が出てくる。
両腕を使い、ずるずると下半身を引きずるその様は水に棲まう妖を思わせた。
こちらを見上げる目は虚ろで焦点が定まらない。
まだ齢が片手で数えられるほどの人間の子供であった。
消えていた花の匂いが再び香る。
それは明らかにその童から、その童の胸に咲く“花”から漂っていた。
「......あ......ね」
その口から言葉になりきれぬ音が漏れる。
童は何度か口をぱくぱくさせると、糸が切れたようにどさりと地面に倒れ伏した。
玄参は短刀を投げ捨て、駆け寄る。
「おい、坊主!大丈夫か!しっかりしろ!」
玄参は骨と革ばかりのか細い肩をしっかりと掴み寄せる。?を軽く張っても反応は無い。
薄れゆく花の匂い。
最初のコメントを投稿しよう!