第一幕》濁り、雷鳴

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頭から離れない。 狂ったように泣き叫ぶ妹の声、目の前で胸を貫かれる兵の断末魔。 生まれ育って来た寺が火炎を吹き上げ、めりめりと梁が焼け落ち、火の粉が空に消える。 何もかも、失ってしまった。 呆然と立ち竦んでいると突如腕を強く引かれた。 早く逃げなさい そして場面は一転する。 静かな川辺だった。 火から命からがら逃げて来た女子供老人達が抜け殻のように河原に座り込んでいた。それを三日月が冷たく照らしていた。
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