第一幕》濁り、雷鳴

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せせらぎの音と混じりすすり泣く声が聞こえるが、誰のものかは分からない。 僕は何をしていいか分からず、ただ川面に揺らぐ月光を見ていた。 更に景色は移り変わる。 ころころした小石の上に倒れていた。 全身に力が入らない。 ぼやける視界に入る手は力なく投げ出されていた。自分の手なのに痺れたように感覚が無く、自分のものではない錯覚に陥る。 衣はびっしょりと濡れて肌に張り付いており、血の匂いが鼻についた。 ゆっくり顔だけ動かして周りを見れば、辺りは死体で埋め尽くされていた。 兵だけで無く、同い年くらいの小さな子供や年老いた者まで。
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