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しかし、感覚も麻痺してしまってしまったかのようで、何も感じることはできなかった。
すぐ目の前に大きな烏が舞い降りた。
烏はこちらを一瞥すると、近くの兵の死骸に飛び乗る。そしてそのまま、傷口からはみ出ている臓器をついばんだ。
ああ、そうか。
僕もああやって朽ちて獣の餌になるのだろう。
目を静かに閉じた。
混濁する意識の中、瞼裏には花が映る。
綺麗、美しい、そのような花ではなく今にも枯れ落ちそうな茶色の物体とでも言おうか。
四枚の白い花弁の内、一枚が今にも落ちんばかりに僅かに繋がった状態である。
でも、その姿には何故か見覚えがあるような気がした。
忘れられない、この花は──
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