第一幕》濁り、雷鳴

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第一幕》濁り、雷鳴

川上の方で戦があったようだ。 上流からは無数の人や家畜が流れ着き、中洲に引っ掛かるようにして、うず高く重なっており、死臭に蝿がたかっていた。 今にも落ちそうなほど垂れこめてきた曇天を背景に死肉をついばみにきた無数の烏が乱れる。 視界の開けたところで、目を細める。 流れてくる旗を見るだけで、少なくとも三国以上が今回の戦に関わっていることが伺えた。 鬼染川(きそがわ)の上流から中流にしか生えていないという珍重な鬼染花(きそばな)を求め、下流から堤に沿って暫く歩いてきた玄参は、丁度いい木陰で背負っていた木箱を降ろすと竹の葉の握り飯の包みを開けた。 「相変わらず戦が絶えないな」
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