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目覚めると、自分の部屋のベッドの上にいた。
カーテンの向こうは明るくて、ベッドサイドに置いている時計を見たら11時を回ってた。
寝惚けた頭で、あぁ学校休んじゃったと呑気に思う。
昨日、どうやって家に帰って来たのか思い出せない。
でも確か、お父さんに会った気がする…何でかな。
のそのそと身体を起こしたら、背中や肩が凄く痛くて、変な寝方したのかと首を傾げた。
ちゃんとパジャマを着ている、ベットに座ってボーッと袖を見ていると、お腹が鳴った。
「あ…いい、匂い」
昨日から何も食べていない、僕の食欲を思い出させたのは、部屋に微かに漂う香ばしい匂い。
僕が好きなクロワッサンの焼ける、匂い。
いつも父さんが秘密のパン屋さんで買ってくるクロワッサンの匂いだ。
身体中に電気が走って飛び起きた、部屋のドアを乱暴に開けて、転がるように階段を降りる。
足が縺れて、リビングのドアの前に行くまでに何度も転けそうになった、短な距離なのに頭が痛くて、多分パニックを起こしている。
父さん、お父さん!胸がなる、痛いくらいに鳴る。
昨日のあれは全部悪い夢だと言ってほしい。
慌ててそこまで来たというのに、リビングの扉を勢いよく開ける事はできなくて、そっと静かに扉を押して隙間から中を見た。
ダイニングテーブルに父さんのマグカップが一つ置いてあって、ふわふわと湯気が立っている。
ホッとした、ホッとして握ったドアノブを押そうとしたら、グッと引っ張られて扉が開いた。
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