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葬儀は八潮さんと渚さんがあれこれと手伝ってくれて無事に終わり、僕は学校にも復帰した。
父の遺品を整理しながら過ごすこと半年、父が他界してあっという間に半年が経った。
僕の身の回りで変わったことがいくつかある。たまに優子さんに連れられて、二人でよく買い物に行くようになった事。
それから、八潮さんと渚さんがうちにやって来るようになった事。
必ずどちらかが家にいる、どちらもいない事の方が珍しい。
一人ぼっちで寂しい筈の家に灯りがともっているのは、少なからず僕の心を癒してくれた。
だけど僕はいま少し困った状態だ。
「…狭くないですか」
「気にならないが」
「そう、ですか?」
「波留はあったかくていいなぁ」
二人に挟まれてソファに座るのはいつもの事、このやり取りもいつもの事。
そう、この二人は何かと距離感が近すぎるのだ。
右で本を読むのは八潮さん、左で僕の髪を弄り寛ぐのは渚さん。
風呂上がりは大体こんな風になる。
髪を乾かし、ほかほかの体を両側から挟まれて、そのうち僕がうたた寝を始める。
そうしたらどちらかが部屋へと運んでくれるのだ。
まるで体温を分け合う様に寄り添う僕ら、僕は随分と甘やかされているなと思う。
もうそろそろ…僕は大丈夫だよと言わなければと思うのだけど。
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