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その日の晩 波留と夕飯を済ませて帰宅すると、自室にいた渚がリビングに顔を出した。 「で、波留はなんて?」 「少し考えさせてくれと」 「考える必要どこにあるー?」 元々渚と二人暮らしの賃貸マンション。 波留と住むならば今の部屋は少し手狭だ、一人部屋も用意してやりたいから引っ越さなくてはと張り切っていた渚に今日の話しを聞かせた。 ダイニングテーブルに突っ伏して項垂れる渚が、只の馬鹿に見えるが、正直気持ちは同じだ。 「一緒に住んでさ、でろっでろに甘やかしてやりたいな」 「馬鹿な事考えるなよ」 「八潮だって、抜け駆けするなよムッツリめ」 「人の事言えないだろ、ムッツリってお前」 渚の語彙に呆れて溜息を吐く。そうなのだ、俺たち兄弟は母の最愛の人の、最愛の子に邪な思いを抱いている。一緒に住んで籠絡出来ればそれもよし、意外としっかり者だから、自分の道を歩んでいくならそれこそ兄として支えてやる所存。 ただ一つ言えるののは、俺も渚も波留に一人暮らしなどさせるつもりは毛頭無いと言う事。 さて、どうしたものか。
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