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人目を憚らず僕の手を引く渚さん、繋がれた手が二人の間で揺れている。兄弟など居ない僕の前に、突然降って湧いた様に現れた優しい兄達。 ーーー好き、大好き。 でも僕が感じているのは兄弟愛じゃない、二人の兄を独占したい、この気持ちは…。 おかしい、だって変だ。血の繋がらない、況してや男の人を、しかも二人も独占しただなんて、僕だけを見ていてほしいだなんて。だからこの気持ちに蓋をした。喪ったものが大き過ぎて、身近な優しさに依存してしまったのだと言い聞かせた。 それなのに、優しさに溺れてずぶずぶに溶けてしまう前に自立しようとしたのに。 大きな波は僕を飲み込もうとする。 『…今迄の様には行かないよ』 暗にそんな風に言われたら僕は…二人の側に居る心地よさを知ってしまった僕は、その手を簡単に手放す事なんて、できない。 握られた手に力を込めると、応える様に握り返してくれる大きな手。この手に何度も慰められた、励まされた、沢山の優しさを貰った、でもまだ足りない。 どんどん貪欲になる、おかしい、おかしい、僕は…。 「渚さん、あのね…授業参観の手紙、偶々だって言ったけど、本当はわざとリビングのテーブルに出しっ放しにしたんだ」 「ーーうん?」 歩みを止めた僕に引っ張られて、渚さんも足を止めた。爪先から辿って彼の顔を仰ぎ見ると、まるで幼子をあやす様な優しい目が僕を見下ろしていた。 「来てくれたらいいなって、だけどなんでかな…二人を皆んなに自慢したかったのに、今はもう僕の知ってる人の誰とも会って欲しくない…これって変だよね?」 ーーー僕、変でしょ?おかしいよね? そうだね、おかしいね。そう言って愉快に笑い飛ばしたり、困って苦笑いの一つでもしてくれたら良かったのに。 それなのに目の前の綺麗な人は、目を見開いて一等嬉しそうに笑ったんだ。
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