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そう、良く笑う人。 じっと手元に視線を注いでいると、そんなに見られると緊張すると茶化す様な声が聞こえた。どうにもこうにも居た堪れず少し下を向くと、後ろから伸びて来た彼の手が僕の顎を掬い、もう少し我慢してあと少しで終わるからと言う。耳元に注がれた声がくすぐったかった。 「あー、楽しかった!ありがとう」 「…こちらこそ、ありがとうございます?」 「ーーふははっ!」 最近放ったらかしだった髪を綺麗に整えてもらった、利害の一致があったとはいえ技術を駆使してもらったのだからお礼をと思ったら、変に声が上ずった。彼はそんな僕の頭をこねくり回して笑うと奥へと消え、コーヒーの良い香りと共に戻って来た。 「やー、本当にありがとう。はい約束のコーヒー、砂糖とミルクは適当にどーぞ」 「ありがとうございます」 「でだ!悩み事かね?青年」 「…えっと…家の、事で少し…」 「まぁ、その年頃ならそうでしょうなー。プライベートないもんなー」 ナニも出来ないよな?と片手でジェスチャーまで始めた彼に、ナニの意味を理解した僕は慌ててかぶりを振った。 「いいね、年相応で可愛いな君。顔真っ赤じゃないか」 顔にでるタイプだなと笑う彼が、ふと真剣な眼差しで僕を見た。その視線に釣られて僕も彼を見る。 「君が望まなければ、僕らは明日にはもう他人だよ。話してみる?」 僕に向けられたそれは優しい眼差しと声だった。 快調に飛ばす日常会話や気さくな態度はどこか渚に似ているのに、鋏を持つ真剣な目は八潮を思い出させる。何となく、彼は二人を足して割った様に見えるのだ。 だからだろうか、つい話してしまった。両親のこと、家の事、血の繋がらない兄達と同居しないかと言われていること。 彼は黙って僕の話を聞き、最後にそうかと呟いた。何がどうしろとも言わず、ただ聞いて時折相槌を打つ、まるで纏まらなかった感情を整理する時間をくれたそんな感じだった。
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