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ぼたぼたと落ちる涙は、膝や握りしめた拳や、土間をどんどん濡らす。
目玉が熱い、痛い、こんなに溢れる涙の止め方なんて、僕は知らない。
彼方此方に父さんの気配が残っていて、どこからともなく父さんの声がする。
僕の大好きな家、一人ぼっちで悲しくて、寂しい。
一人になってしまった…
身体からどんどん血の気が引いていく、寒くてたまらず自分自身を抱きしめてみても、震えだした身体からはじわじわとと体温が失われていく。
寒い、寒い、このまま眠ってしまおうか。
怖い、怖い、一人は嫌だ、このまま眠ってしまったら、父さんの側に行けるかもしれない。
それは僕にとって、唯一の希望に思えた。
土間に蹲って、擦り剥ける事も構わず額を擦り付ける。
このまま目を瞑ってしまえば……あぁ、父さん。
迎えに来て…お父さん…お父さん…お父さん。
「ーー波留!?波留、しっかりしろ!波留!!」
誰かが僕を呼んでいる、貴方じゃない、僕の名前を呼んで欲しいのは貴方じゃないの。
必死で僕の名を名を呼ぶその人に、そんな風に名前を呼ばないでと言いたいのに、喉が張り付いて声が出なくて、悲しかった。
とても悲しかった。
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