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「いつもん同じ・・・勝負は1本じゃ・・・。」
そして・・・ふわっと風が吹き・・・桜が舞う瞬間・・・少年は・・・踏み込んで・・・桂の左籠手を目指して打ち込んで来た・・・。
ほう、昨日よか踏み込みば深か・・・じゃっどん・・・。
桂は左手を引き・・・打って来た尚輝の竹刀を躱すと、そのまま右足を一歩踏み込んだ・・・セーラー服の白いスカーフがふわっと揺れるのと同時に、『すぱ~ん』と・・・直輝の頭に綺麗な面一本が決まった・・・。
「・・・!」
その場に蹲って、頭を押さえる尚輝に桂は振り向いて蹲踞をすると立ち上がって言った。
「昨日よか、ちいっとはマシになりよったけんど・・・こん、『遠賀ん鬼姫』ば相手にしようは、ま~だまだじゃき・・・。」
そして、まだ頭を押さえている尚輝の傍に屈んで言った。
「明日は、防具ば着けよって来んしゃい。
したら、わあも・・・たんこぶを避けて打たんで良かとよ。」
「ちっきしょう~!」
尚輝は立ち上がると・・・ぼろぼろと涙を流しながら、屈んでいる桂を見下ろしながら言った。
「明日は必ずやっちゃるけん!逃げんとき!」
「よか・・・貴サンが納得すんまで、そん頭んたんこぶば量産しちゃるきに。」
桂は、笑いながら尚輝の顔を見上げて言った。
「よ・・・良か・・・き・・・今日は、こんで勘弁しちゃるけん・・・の・・・。」
尚輝はそう言うと・・・桜の木の下に置いてあったランドセルを掴むと・・・桂の顔を一度だけ振り返ってから・・・猛ダッシュで坂を駆け下って行った・・・。
あ~あ・・・まっこち当分退屈はせん様じゃの・・・じゃっどん、あんは心配ばしようけんがかの・・・桂はその後姿を見ながら前髪を軽く掻き分けた。
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