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「こんなことも出来ないなんて……めんどくさいでしょ?」
こんなだから、京ちゃんに嫌われちゃうんだ。それで、嫌われてることにも気付かないで、頼りっぱなしになっちゃって――わたし、嫌な奴。
委員になってから、わたしは忙しさを理由に京ちゃんと顔を合わせなくなっていた。廊下をすれ違うことはあっても、目を伏せて、声はかけない。
「そうか? 頑張ってるの知ってるから、俺は気にならねぇけど」
「えっ」
あんまり滝沢君があっさり言うから、私はびっくりして手を止める。
「で、でも迷惑……」
「迷惑かけても、相原はちゃんと謝るし、同じミスしないように気を付けてんじゃん」
じわっと涙があふれてきそうになるのをこらえる。胸が苦しい。喉が詰まって、だけど、言葉がぽつりぽつりと飛び出した。
「が、頑張りたいの。今までサボってきた分、辛くても、そんなの、今までのツケを払ってるだけだから……っ」
「――……そうか。ま、俺もフォローするし、声かけてくれよな」
「う、うん!」
そういえばわたし、他の人に聞けばすぐ分かることなのに、一人で考えて勝手にやってしまうところがあるかも。人に話しかけることが怖くて、無意識に避けてた。それがミスの原因になってたかもしれないし、それに、京ちゃんのことだって――……。
「あの、滝沢君、わたしもっと、頑張るねっ」
(そうだ、話さなきゃ。みんなとも、京ちゃんとも!)
その時、印刷室の前の人影にわたしは息を飲んだ。
(京、ちゃん……?)
京ちゃんはわたしと目が合うと、クルリと背中を向けて去っていく。
(すごく、怒った顔してた……!)
「待って、京ちゃんっ。ごめんね滝沢君、わたしアンケート出してくるっ」
わたしは机の端の紙束をひったくると、京ちゃんを追いかけて印刷室を飛び出した。
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