桜の声を聞く

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 青森県弘前市は桜と林檎の街だ。本州の北の端。青森市からは電車か車で一時間くらいの内陸に位置する。街中を抜けると林檎畑と田んぼが広がり、空が大きい。  俺が育ったのは仙台だけど、母の実家でもあり、小さいときから何度も連れてこられたし、住宅地に家があったので特に田舎という感じはない。単に祖父母の家という感覚。  二浪の末、ようやく関東の大学に滑り込んだ俺は、五月の連休にひとり弘前に行ってみた。母が仕事で休みがとれず、祖母の様子をみてきてほしいと頼まれたからだ。昨年祖父が亡くなり、祖母は一人で暮らしている。    俺は俺で大学にも慣れてきた頃で、バイトも無理行って休みをもらった。東京から青森まで新幹線の一人旅というのもいいもんだと思った。  考えてみると、小さいころは泊りがけで遠出をする場所は必ず弘前だった。その頃はクラスメイトが家族と旅行に出かけたという話を聞いてちょっぴりうらやましかった。  思うに俺の家は金銭的に余裕もなかったのだろうと思う。母の実家に行けば宿泊費は浮くもんな、と新幹線の窓の外を見ていて今更ながら気が付いた。
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