桜の声を聞く

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 弘前城は昔、本丸に大きな天守閣があったそうだが、落雷で焼失し物見櫓(ものみやぐら)を改装した三層の天守が残っている。今はその下の石垣が膨らんで倒壊の恐れがあるとかで堀の水を抜き、天守自体も曳家で中央よりに移動している。これから何年もかけて石垣を修理するのだそうだ。  俺が行ってみたかったのはその天守台から見る岩木山の眺め。小さい頃撮った一枚の写真に、その天守台から岩木山を眺めている自分がいた。  はっきり言って記憶がない。背景にはしだれ桜が写っている。何を思ってそこから眺めていたのか少し興味があった。俺のことだから何も考えてなかったかもしれないが。  弘前公園の桜は、誰かが言ってたけど「桜の暴力」という言葉に尽きる。圧倒的にこれでもか! と咲き誇り、きれいに手入れされている。  これも母の受け売りの話だが、ここの桜は花が終わった後に剪定されるのだそうだ。桜切るなんとか、というけれど同じバラ科の弘前の林檎の木は手入れの為にあえて剪定するのだそうだ。そのノウハウをもってして数千本の園内の桜は人の手が掛けられ、あの迫力ありすぎる桜が出来上がる。
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