桜の声を聞く

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 今、この場所に立って、あの子供の頃何を考えていたのか、やっぱり思い出せないけど「人の想い」で、この桜は咲いているんじゃないかなとも思えた。  良いもの、悪いもの、悲しいもの、うれしいもの、すべて全部……。  本当は桜はきっと本能で勝手に咲くのだろう。  俺がここに来たかった理由がなんとなくわかった。桜の木の下に立ってみると、妙にかっこいい言葉で言ってみたくなる。   「諸行無常」  この自然の中で人間ってちっぽけだし、自然は見返りも何もないけど、ある時一瞬その綺麗な姿を見せてくれる。勝手な思い込みでも何でもいい。明日も頑張れって言ってくれてるみたいだ。……俺、誰かに頑張れって言ってもらいたかったんだろうか。  祖母にも明日戻る時にちゃんと言おう。「また来るね」って。その言葉だけでいい気がした。 fin.
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