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3月10日、涼太さんがウチへ遊びに来てくれた。
彼が来る前に、紅茶の準備とお菓子の準備をして、テーブルに並べる。
事前に住所と目印になる建物を伝えておいたので、迷わずに来れたよ言ってくれた。
「お邪魔します。これ、群馬のお土産ね。」
「煎餅っすか?嬉しいっす!」
「そ、日持ちもするしさ。」
大学生の涼太さんは、前より大人びた気がする。
それに比べると俺はまだまだ子供っぽいかな?
リビングに入って、ソファーに座ってもらった。
「今日、京弥さんの大学合否出る日なんです。」
「前期かー。」
「そう、それなんですよー。」
「なんか、おれまで緊張してきた…」
涼太さんは自分の受験を思い出したみたいで、苦虫を潰したような顔をしている。
「あれ?涼太さん、年子の弟さんいませんでした?確か、俺達よりいい学校通ってるって聞きましたけど…今日、俺の家に来ちゃって良いんですか?」
「あー、アイツはね、推薦でもうずっと前に受かってるから。春から東京の大学だよ。」
後期の合格発表日までハラハラだったおれとは反対だね、と付け足す。
その表情はなんだか悔しそうで、少し諦めたようだった。俺にも破茶滅茶な姉がいるけど、今の涼太さんのような表情をするような事はなかったな…
ティーポットから紅茶を注ぎ、涼太さんにどうぞ、と伝える。
「サンキュ。おれ、コーヒーより紅茶のが好き。だってアイツ苦いもん。」
「俺もっす。これ、キーマンっていう紅茶で美味しいんです。」
せっかく大切な先輩が来てくれたから、今日は紅林保葉がお土産にくれたキーマンを淹れた。
涼太さんは大学のことや、一人暮らしのことを教えてくれた。
理工学部はほぼ男だから、男子校にいるみたいと言っていた。人数もそんなにいないのもあって、みんなで仲良くやってるし、毎日同じような格好で多くの人はジャージで登校してるよと。涼太さんは、まだ、おれはジーンズ履いて登校してると言っていた。
お昼を過ぎても、京弥さんから連絡がない。合格発表は午前中だったはずだ。
次第に涼太さんはソワソワし始めた。
「京弥、まだかな…もう、発表あってから大分経ってるよ?」
「あの人、ボケたところあるから…」
「そう!それ!」
自分の事ではないのに、涼太さんは頭を抱えている。
すると、インターホンが鳴った。
俺は玄関へと小走りで向かう。涼太さんも一緒に来てくれた。
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