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「散らかってますけど、ウチに来ます?父は明日からまた海外ですし、母も仕事で夜遅いので。ご飯は自分達で作ることになりますけど。」
「お、じゃあまた、おれ、たこ焼き作りたい。」
「ウチたこ焼き機ないです…あの時は玲さんが持ってきてくれましたけど。」
「俺持っていきます。」
昼食後は、京弥さんが買ってきてくれたケーキを食べた。ショートケーキ、フルーツタルト、ミルフィーユ。涼太さんは、ここのショートケーキが好きなんだよね。恥ずかしいから誰かにあんまり言ったことないけど…と言いながら、有無を言わさず箱からショートケーキを取っていた。俺もショートケーキが良かったと思ったけど、涼太さんがあまりにも嬉しそうだったから言わないであげた。だから俺はフルーツタルトを頂く。
「ははっ、またやりたかったんだよねー。アルトサックスお泊まり会。」
ケーキにフォークを入れながら涼太さんは言う。
「玲さんいませんよ?」
「いーの!あのスケベは!」
「スケベ?」
涼太さんは耳を赤くしている。まるでケーキの上に乗っている苺みたいだ。
「ほら、京弥なんていつもあの人に色々セクハラされてたじゃん。抱きつく、触る!これ、犯罪!」
朝凪さんが京弥さんにセクハラをする姿は容易に想像できる。でも、あの人にとってセクハラは挨拶のようなものなのでは?と思ってしまったのは涼太さんには内緒だ。
日が暮れる前に京弥さんは、また明日。と言って帰っていった。
京弥さんを玄関まで送る時、涼太さんの首筋に赤い斑点のようなものがあるのを見てしまった。
「涼太さん、首の後ろのところ、どうしたんですか?」
するとまた彼は耳まで真っ赤になってしまった。そしてなかなかこちらに顔を向けてくれない。
「えっと、もうすぐ春だから…虫にやられたっぽい…?」
「群馬、虫多いんですか?」
「うーん。時々?」
「この前、遊びに行ったとき、でっかい虫と格闘しましたもんね。」
「そう、そんな感じ。」
今度、群馬に行くときは、虫除けスプレーを持参した方が良いかもしれないなと、本当の意味も考えないまま、その時の俺は納得していた。
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