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「強烈ですね…」
人のお母さんのことを強烈と言うなんて失礼かもしれないけど、言わずにはいられなかった。
「表現としては、ひかりはナイフを隠して歩いているけど、母さんはナイフを振り回して歩いてる感じ?」
明澤先輩はとてもとても可愛らしいお人形のような見た目と中身のギャップが凄い人だ。俺も最初はなんて可愛い人だろうと思ったが、実際接してみるとなかなかのキャラクターだなと思った。
「その反面、父さんは穏やかだよ。」
「でしょうね。」
おじさんのへにゃりとした笑顔が思い浮かぶ。
「僕は父さんの良いところと、母さんの悪いところを持って産まれたってよく言われるよ。」
おじさんの良いところは想像がつくけれど、おばさんの悪いところって何だろう。会ったことがないからわからないけれど。
京弥さんからご両親の話をしてもらえて嬉しかった。まだまだ知らないこともあるだろうけど、彼の事をまた一つの知れたような気がした。
ドアの隙間からお風呂のいい匂いが微かにする。
「あー、いいお湯だった。」
石鹸の香りを纏って涼太さんが部屋に入ってきた。
「葵ちゃん、クマ好きなの?」
涼太さんは俺が抱えているクマのぬいぐるみじっと見る。俺は黙ってぬいぐるみを彼に渡す。
「おばさん、まだ帰らないの?」
「はい、今日も残業です。」
「そっか、大変だよな…疲れとかヤバくない?」
「じゃあ、母さんが元気になるように、一枚頂きます。」
そう言うと京弥さんは涼太さんに向けてスマホを構える。カシャっという音がする。クマと涼太さんのツーショットだ。
「は?写真?」
「母さん、涼太さんのファンなので。いつも部活の写真を見せると涼太さんばっかり見てますよ?」
母子共に揃って涼太さんが好きなんだ…
どうやら早水家の遺伝子は涼太さんにひかれる何かがあるようだ。
俺は若干羨ましく思ってしまった。
そんなアンタはお母さんに写真を添付したメールを送っている。
「え、あー、あんなキレイなお母さんがファンとか…おれ、嬉しいわ…」
涼太さんは顔を赤らめて本気で照れているようだ。
そりゃアンタのお母さんならキレイに決まっているだろう。
「あ、返信早い!ほら、喜んでいますよ?」
京弥さんのお母さんから返ってきたメールは、涼太くんやっぱりサイコー!という短い文だったが、喜んでいるのがよく分かった。
涼太さんはこの人の何がアンタ達親子を惹きつけるのか非常に知りたいな…と思った。
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