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「せっかくの美人なんだから、おしゃれしたら?きっとすごいモテると思うよ?」
「何したってそんなにモテないですよ…」
「もー!そういうところが可愛くないけど、可愛い!」
せっかく大学を合格して、俺の中ではお祝いモードだったけれど、俺とは別の場所での生活が始まるってことは、新しい人間関係が始まるってことで…
そう思うとお祝いモードが薄れていき、よくわからない焦りが生まれる。
「そう簡単に人間オシャレにはならないですよ…」
なんて意地悪なことを言っているんだろう。
だけど、俺は京弥さんがオシャレでもオシャレじゃなくても好きだし、きっとその気持ちは変わらない。
「うわ、葵ちゃんキツいね…」
涼太さんは俺と京弥さんを交互に見ながら呆れたような声を出す。
「ちょっとは頑張ります…」
隣で京弥さんが、明日服でも買いに行こうかな?と悲しそうに呟いていた。
頑張らなくて良いよ、そう言いたかった。
これ以上、人を惹きつけるようなことしないでほしい。
「葵ちゃん、後輩達と喧嘩しないでやれてる?」
「喧嘩ばっかです。アイツも俺に負けないくらいキツいですから。」
「3年生になるんだからさ、もうちょっと言葉とか考えて話さないと…その後輩君は大丈夫かもしれないかど来年の子はそうはいかないかもよ?」
なんて正論を解かれているんだろう。
「すいません…」
でも俺がここまで意地悪なことを言うのも京弥さんだけなんです…てもそんなの涼太さんには分からない。
「分かればよろしい。」
涼太さんはチラリと時計を見る。もう既に日付は越えていて時計の針は1時20分を示している。すると彼は勢いよく布団に潜り込む。
「寝るか!」
京弥さんは部屋の電気を消してくれた。
「そうだ、京弥、私服何枚くらい持ってる?」
「…今の季節に着れる服は上は7枚くらい…ズボンは3枚…あとは、冬のコートが1枚とスプリングコートが1枚…ですかね…」
「1週間に1回ずつ着てる感じ…なんだね…」
「ちょうど1週間と同じだけ服あるんで、月曜日はこの服って決めちゃえば楽かなって思って…」
「そ、それはやめよう!」
開いた口が塞がらない。合理的なのかもしれないけれど、ズボラを通り越している気がする。
「玲さん頑張って服選んだのに…」
「それ夏服です。」
「明日、服買いにいこ?おれも欲しいし。」
「選んでくれるんですか?」
「おれも人のこと言えるほどオシャレじゃないけど、一緒に見よっか。」
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