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京弥さん、アンタは冗談だって思ったんだろ?
だって、俺も京弥さんも男だから。まさか、いつも部活で一緒にいる後輩が自分の事、恋愛対象に見てるなんて思わないよな。
後悔してるよ。玉砕すりゃよかったんだ。ちゃんと好きだって言えば良かったんだ。
でも、あの時の俺はアンタに嫌われるのが何よりも怖かった。
日本とロンドン。時差もあるし、物理的にもすごく距離がある。
京弥さんが紅茶よりもコーヒー党であることは知っていた。
たけど、どうしてもアンタとの繋がりを消したくなくて、どうしても俺のことを忘れて欲しくなくて、俺が好きな紅茶を送りつけた。
自分からメールなり、手紙なりで連絡をすればいいのだけど…スマートフォンが普及した今でも、京弥さんは連絡ごとに関してズボラだし、俺は俺でメールや手紙に何を書いて良いのか分からなくなり、ならば、モノを贈ってしまえと強引な事をした。
俺の思った通り、律儀な京弥さんは手紙を送ってくれた。
この手紙を書いている時は、俺のことを考えてくれていたのかな、と思うと嬉しくなる。
手紙は鞄の中にそっとしまう。
ヘタクソな桜の写真は、部屋に飾ろう。
スマホのカメラで何気なく撮ったのだと思う。この写真はアンタが見た景色を撮ったもの。写真を通して同じ景色を今、俺は見ている。
それだけで、俺は幸せになれるのだから。
「しまったな、京弥さんに紅茶贈るとき、癖で店舗の住所書いちまってたんだ…」
この仕事を始めてから、店舗にいる時間が長くて、郵便物を出すときには店舗の住所を書いていることが多かった。
今度からは、ちゃんと自宅の住所を書こう…
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