アサヒ、カケル

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「ナイト、今日も元気だな。よしよし」  夜のように黒毛の僕に名付けられた名前を呼んで、首を撫でられる。  彼は、アイザス王国のラサ将軍。  黒髪、黒瞳にクリムゾンシリーズという紅い装備に身を包んでいる。  色の相性はバッチリ。  義勇兵から将軍に上り詰め、無敗の戦歴を重ね続けている。  目下、ベルグ帝国と戦争中。  僕も従軍してるけど、ラサは刀聖と呼ばれる剣兵‥‥戦う時は僕には騎乗しない。  主に布陣までの移動が、僕の役割だ。  他の騎兵に混ざって戦ってみたいという気持ちもあるけれど、やっぱり死ぬのは怖い。 「クロネ鉱山で崩落事故、多数の鉱夫が巻き込まれたそうで、軍に救助要請が来ております!」 「急ぎ、救助部隊を編成! オレも向かう!」  クロネ鉱山は鉄鉱資源の採れるアイザスの領地。  軍が多くの鉄を必要としているため、鉱夫が増員されている。  出来る限りの早馬を用意し、救助部隊の第一陣となって出発する。  救助に必要となるであろう大がかりな装備は、第二陣に配備と的確な指示を出した。 「ナイト、頼むぞ」  非番だったラサは鞘の仕込まれた盾と刀だけで、鎧は着てない。  軽い、思う存分走れる!  救助部隊の先頭を疾駆する。  しかし、鉱山に近づくに連れて悪路で思い切り走れなくなった。 「わたくしの力が必要なのではなくて?」 「リーム!? また城を抜け出してきたのか!」 「前にも言いましたけど、国を守るのは王族の責務ですわ! ラサ一人くらいなら連れて飛べますけど、どうなさいますの?」  お姫様は、飛竜を駆る竜飛兵。 「‥‥頼む」  ラサは、飛竜の脚を掴んで先行した。  こんな悔しい事があるかよ!  平坦だったら絶対に負けない‥‥でも、こうも障害物があると、障害物を無視できる飛竜に分がある。  それでも第一陣として先頭を走り続けた。  帰路では僕が必要になるはずだから。
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