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時は流れ、アイザス王国は、クリス王国・ハイガード王国と三国同盟を締結。
連合軍となってベルグ帝国へと攻め込んでいき、ついに帝都を包囲した。
「朕は、ベルグ帝国皇帝フレス・ベルグ15世である。朕が居る限り、帝国は滅びぬ!」
帝都は城塞都市だけど、やはりベルグ帝国軍は野戦に打って出てきた。
連合軍の兵力は陸軍三個大隊(3000人)・空軍一個大隊(1000人)。
帝国軍は僅か1200人ほど。
兵力差は歴然だよね。
さすが皇帝を名乗るだけあって、威厳とカリスマに満ちた壮年のハムン族だな。
巨躯の軍馬に乗り、重厚なプレートメイルに大剣を背負っている。
「朕と一騎打ちする強者はおらぬか!」
普通に軍隊戦になれば間違いなく三国同盟軍が勝つだろう。
だけど、一騎打ちを断れば、帝国軍の士気は上がり、同盟軍の士気は下がる。
何より、アイザス王国には最強無敵の英雄ラサ将軍が居る。
消耗戦をしても、今後の隣接国への備えが弱まるだけ、受けるのが道理だな。
「我こそは、アイザス王国ラサ・アッシュ将軍。その一騎打ち、受けよう!」
ラサが名乗りを上げた。
しかし、何故か、いつもの装備じゃない。 楯から刀が外され、アイザス王国の騎士剣を腰に差している。
「ナイト。初陣だが、いけるな?」
あの時の屈辱は、今も忘れない。
そして大舞台で僕の出番が来た!
僕は、大きく嘶いた。
ラサが僕に騎乗する。
ラサを乗せて、今まで安全だった僕は、変わる。
戦うと覚悟を決めて。
左手には楯と手綱、右手には騎士剣。
「飛剣真空斬!」
先手を取ったのはラサ。
真空の刃を大剣の腹で受け止めるベルグ皇帝。
軍馬の腹を蹴り、駆け出す。
それに合わせて、ラサも僕の腹を蹴って駆け出す。
≪GAKiiiiiNッ!≫
二人の剣が激しくぶつかり、駆け抜ける。
踵を返して、再び、相対する二人。
≪GAKiiiiiNッ!≫
今度は馬の脚を止め、鍔迫り合いになる。
流石に片手の騎士剣と両手の大剣での力比べはベルグ皇帝に分がある。
見事な馬術で身を翻したラサが楯で大剣を受ける。
そして、楯の影から騎士剣を突き出し、攻勢に出る。
何合撃ち合っただろうか。
両者とも疲労の色は濃く、手に汗握る一騎打ちの終結は間近に思えた。
「皇帝陛下、御許しを!」
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