Chapter3 箱の中

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「案内してあげるよ。」 うさぎが手を差し出してくれた。 うさぎはちょっと優しいのかも。 そういえば、クラスでもさやちゃんだけは優しい。 歩きながら、うさぎが色々説明してくれる。 「あっちはフワフワの森。」 「この汽車はここをぐるって一回りしてくれるよ。」 「あそこはケーキがたくさんあるんだ。」 うん。知ってる だって全部私が置いたんだもん。 心の中でつぶやいた。 「ここはいいよ~。 時々見られること以外、いっつも安心できる気楽な毎日が続くからね。」 「見られるって?」 「時々大きな目玉が上からぼくたちを覗いてくるんだ。」 「その時だけは、ぼくたちは動けない。」 「見られている時はこの世界の時が止まるんだよ。」 えっ? もしかしてそれって私のことじゃ・・。 「ねえ、その目が出た後どうなるの?」 「どうって、 何にも変わらない時もあるし、今日和美が突然現れたみたいに、急に道に光る石が出現したり、山が出来たりすることもあるよ。」 やっぱり! その目は私だ。 私が見た時だけ、この世界は時が止まって私の自由にできるけど、見てない時には、現実と同じでねずみみたいにいやな奴もいるし、おんなじことを繰り返して いるだけなんだ。 ・・・ (つまらない。) こんな狭くて決まりきった世界なら、まだ現実の方がマシだよ。 箱の外からはあんなに色鮮やかに見えていた箱の中の世界が、今では色あせて見える。 その時、遠くから呼ぶ声がした。 「和美~!」 お母さんの声? 目眩がする。 和美はその場に崩れ落ちた。
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