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「案内してあげるよ。」
うさぎが手を差し出してくれた。
うさぎはちょっと優しいのかも。
そういえば、クラスでもさやちゃんだけは優しい。
歩きながら、うさぎが色々説明してくれる。
「あっちはフワフワの森。」
「この汽車はここをぐるって一回りしてくれるよ。」
「あそこはケーキがたくさんあるんだ。」
うん。知ってる
だって全部私が置いたんだもん。
心の中でつぶやいた。
「ここはいいよ~。
時々見られること以外、いっつも安心できる気楽な毎日が続くからね。」
「見られるって?」
「時々大きな目玉が上からぼくたちを覗いてくるんだ。」
「その時だけは、ぼくたちは動けない。」
「見られている時はこの世界の時が止まるんだよ。」
えっ?
もしかしてそれって私のことじゃ・・。
「ねえ、その目が出た後どうなるの?」
「どうって、
何にも変わらない時もあるし、今日和美が突然現れたみたいに、急に道に光る石が出現したり、山が出来たりすることもあるよ。」
やっぱり!
その目は私だ。
私が見た時だけ、この世界は時が止まって私の自由にできるけど、見てない時には、現実と同じでねずみみたいにいやな奴もいるし、おんなじことを繰り返して いるだけなんだ。
・・・
(つまらない。)
こんな狭くて決まりきった世界なら、まだ現実の方がマシだよ。
箱の外からはあんなに色鮮やかに見えていた箱の中の世界が、今では色あせて見える。
その時、遠くから呼ぶ声がした。
「和美~!」
お母さんの声?
目眩がする。
和美はその場に崩れ落ちた。
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