青の煌めき

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昔々のことだ。この大陸の片隅に、まだまだ小さいが豊かな国があった。国民は皆、幸せに暮らしている。誰1人として、生活に困る者はいない国。しかし、隣国の政府は不思議で仕方なかった。何故、小さな国が栄え続けるのか。そもそも何故、あの国は豊かになったのか。そんなある日、1つの噂が彼らの耳に入った。あの小さな国には、宝石を生み出す女がいると言うのだ。そんなまさか、と人々は信じなかった。すると、それでは俺が確かめに行きましょうと言う男がいた。その国で薬屋を営んでいた男だった。 男は小さな国に入国し、噂の女に近付いた。甘い言葉を囁き、少しずつ距離を縮め、彼女の1番になった。しかし、どれだけ仲を深めても彼女が宝石を生み出すことはなかった。男は落胆した。所詮、噂は噂に過ぎなかったのか、と。これ以上、この女と一緒にいる意味などない。男は女に全てを打ち明け、自分は国に戻ると言った。男は、女に向けた愛を持ち合わせていなかったのだ。それでも、女は違った。彼女は心の底から男を愛していた。忘れることが出来ない程に愛していた。女の心は彼女自身を支えることも出来ず、崩れ落ちた。そして、女が涙を溢し出すと、男の目の色が変わった。彼女の涙は、海のように深く青い宝石だった。 国へと戻った男は、まるで何事もなかったように仕事を再開した。男の頭を支配していたのは、あの時の女が流した涙と、男を一途に愛する目だった。忘れられるはずがなかった。彼女への愛はないものと思っていたが、長い年月が2人の間に愛を生み出していたのだ。男の後悔は海より深かった。きっともう2度と会うことは出来ない。それでも愛している。男はもう1度女に会う為の方法を考え続けた。遂には仕事も、眠ることも、食べることも放り出して考えた。そして満月の綺麗な夜、彼は思い付いたのだ。 次の日、日も高くなった頃に女は目を覚ました。ふと気が付けば、頬には涙が伝っている。理由は分からない。でも、確かに何が変わってしまった。彼女の頬を、透明な雫が濡らしていた。 「空の上でなら、貴女を愛してもいいですか?」
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