7人が本棚に入れています
本棚に追加
~~~~~~
「あのさ、人間は『自分の魂の片割れを探して彷徨っている』って聞いたことない?」
酒井は俺の質問にも、さっきの自分の言いかけさえ無視して、勝手に話を切り出した。
「はぁ?」
「昔、人間は2つの魂を持っていたって話。
魂だけじゃない。姿形も2人分だったんだ。
2人で1つだった人間は、知恵が働いて、動くのも早くて、いつの間にか神を恐れなくなった。
それで、神は人間の身体を真っ二つにしてしまった。
神を恐れる弱い存在にするために。
1人になった人間は、神の思惑通りとても弱くなったんだ。
片割れがいないと生きていけない、と思うほどに。
だから、人間は今でも、片割れを探し続けている。
引き合う魂の力を信じて」
「知ってるよ。ギリシャ神話だろ。だからなんだって言うんだよ。
まさか、お前の片割れは俺だって、言うんじゃないだろうな」
俺は牽制してやった。
いい機会だ。言ってやろうじゃないか!
「あいにく俺は、ロマンチスト主義者じゃない。
この際だから、お前に教えてやる。
人間の感情なんてもんは、燃えるだけ燃えてその後は、灰が残るだけだ。
物質が燃え上がるのと同じ、ってこと。
残るのは、燃えカスだけ。
お前が期待してる俺の魂に、片割れなんかいない。俺の魂は燃えカスだから」
俺は立ち上がって、上から酒井を見下すように睨みつけた。
最初のコメントを投稿しよう!