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「おっと!」
雪に足を取られ、転びそうになったところを、力強い手によって助けられた。
慌てて見上げたその顔は、2年前に別れたきりの男。
酒井 龍成だった。
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2年前のあの雪の日、自分の性癖が酒井にバレたと知った。
全ては、なんの因果か、俺宛の手紙が手違いで酒井の元に届いたことから始まった。
手紙には『明日の昼休みに、学食の裏に来て欲しい』という謎の一文。
それを見た酒井は、よせば良いのに面白半分で待ち合わせ場所に行き、手紙の差出人に会ったらしい。
詳しくは聞いていないが、その相手は俺が贔屓にしている店で意気投合し、一度だけ寝た男だと思う。
身体の相性が良かったので、ホテルで連絡を交換したは良いが、その後同じ大学だと知り、急遽キャンセルした。
こっちは、苦学生だから寮生活しているっていうのに、同じ大学のやつと関係を持つことで、ゲイだとバレるリスクは負いたくない。
いや、正確には、ゲイだからって寮を追い出されるわけではないが、共同スペースにて、どういう目で見られるか、と考えただけで憂鬱になる。
そういう面倒な事は、極力避けて生きて来たんだ。俺は。
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