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それなのに、男はやたらと俺に執着した。
そして俺が寮に住んでいることを突き止め、事もあろうか、酒井のポストに手紙を投げ入れたというわけだ。
俺に惚れてんなら、ちゃんとポストの名前を確認しろ、つぅの!
ったく、腹ただしい。
とにかくそんな経緯で、酒井にバレたんだ。
『終わったな』
俺は心の底から落胆した。
膝から崩れそうになる身体を叱咤し、何とか別れのセリフを口にすると、踵を返して逃げ出した。
夜だからか、俺のヘタレな精神がそうさせているのか、本当に目の前は真っ暗で。
俺はただ雪に光るアスファルトだけを見て、力強く歩き続けた。
雪が降っていてくれてよかった。
おかげで、頬の雫を拭えたから。
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