プロローグ

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翌日、俺は寮を出て友人の家に転がり込んだ。 幸い卒業間近の4年生だったから、『退寮届け』はすぐに受理された。それにこの時期、大学に来る生徒は少ない。 俺が寮からいなくなったところで、文句を言う奴も心配する奴もいない。 同室の相沢にだけは、一応ライン入れたけど。 まあ仲良くしていた奴らとは、最後に飯食って、就職の話で盛り上がって『いつか会おうぜ。ラインしろよ』てなもんだ。 今の時代、大学を卒業するくらいで、今生の別れバリのおセンチな気持ちになるやつの方が珍しい。 だけど、酒井は別だ。 多分、今生の別れになる、だろう。 そして俺は、バカみたいにおセンチな気持ちになっていた。 別に酒井に惚れていたとか、付き合いとか、……思っていたわけじゃない。 ただ、……あいつの隣に立っていたかった。 あいつの、無邪気に笑う顔を見ていたかった。 酒井は大学院1年だから、少なくとも後2年は大学の研究室に残る。 どうしても会いたければ、大学に行けばいいと思う。 けれど……
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