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カップ麺の精算をし、湯を入れたものをイートインのカウンターに横並びで置いた。
背中越しにある雑誌スペースでは、ツナギ姿の強面の兄さんたちがグラビアアイドルの話題で盛り上がっている。その声に紛れて、正面に見える向かいのビルから視線を動かさずに呟いた。
「あんさ。お前、なんでここにいるの?」
「酒田を捕まえようと思って」
想定内とでもいうのか、少しも動揺する気配なく即座に答えが返ってきた。
「マジかよ……」
さすがにもう腕はつかまれていないけれど、捕まえる、って……。
もしかして一番奥の席に押しやられたのも、俺が逃げられないようにした、ってか?
こいつ、何考えてんだ?
俺はカップ麺の蓋を開けながら、さらに言いよった。
「お前あの日、例の手紙の男と会ったんだろう?」
こんな場所だし、はっきり説明するわけにもいかず、それだけ言って酒井の顔を横目で盗み見た。
酒井もカップ麺の蓋をビビビビッと、はがしながら言い返してくる。
「あー、あれな。うん、確か……、マコトとかいう名前の、デカイ男だった。
いつもの店で待ってる、って伝えてとかなんとか言ってたな。
あ、うめえ。これ」
そして、こともなげに口にして、麺を食べ出した。
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