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しばらく遊んで兄ちゃんのもとへ帰ろうとすると、「ねえ、」と声をかけられた。
「そこの姉ちゃん、俺らと一緒に遊んでくんない?なんでもおごるからさ。」
突然話しかけられた事と、自分より明らかに年上の男の人数人に話しかけられた事の恐怖で、私は反射的に逃げ出していた。
「ねえ待ってよ。」
しかし、男の中の一人に腕をつかまれてしまい、逃げられなくなった。
「にげることないじゃん。ねえ、俺らと遊ぼうよ。」
とうとう泣き出しそうになった私を無理やり連れて行こうとしたのか、腕を引っ張られる。
すると、引っ張られる別の方向から体が抱き寄せられた。
「人の彼女に、手出さないでもらえますか?」
それ聞いて、男たちは冷めしたのか、「おい、もう行こうぜ。」と言ってどこかへ去っていった。
男たちが去ったのを確認して、兄ちゃんは私を木陰に連れて行ってくれた。
「な、なんで…来てくれたの。別のところで…ゲームしてるんじゃなかったの。」
泣きながら質問する私に対して、兄ちゃんは何も答えてくれない。
「そ、それに兄ちゃんは…知らない人とか、ああいう人とか…無理だから、絶対に関わりたくないって…」
「俺は!!」
兄ちゃんがいきなり叫んだので、私はびくっと身を震わせる。
「ゲームなんかよりお前の方が大切だし、お前のためなら何でもできるんだよ!! お前が傷つく方が、俺には一番怖いんだよ!! 俺は…」
そこで途切れたので、おそるおそる顔を上げると…
…海斗は、瞳から大きな大きな雫を零して、泣いていた。
「俺は昔っから、お前が一番大切で、大事だったんだよ!!」
よかった、無事で本当によかった。と言って、兄ちゃんは私を抱きしめた。
二人してたくさん泣いて、気が付いたらもうすっかり暗くなっていたので、二人で並んで帰る。
「ねえ、海斗兄ちゃん。」
そう声をかけると、いつもどうり「何?」と返事をしてくれる。
「さっきの話の続きなんだけどさ。」
そこまで言うと、兄ちゃんは顔を赤くして弁解し始めた。
「いや、あの、さっきのは、その。…ああもう!そのことはもう忘れろ!」
「私もね、」
私はあえて大きな声を出して、海斗の声を遮る。
兄ちゃんが驚いているのをよそに、私は大好きな海斗兄ちゃんに飛びつきながらこう叫ぶ。
「昔から海斗兄ちゃんが一番大切な人で、大好きな人だよ!」
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