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「え~……こちら、豊(ゆたか)です~。豊、この人たちは俺の上司の土方歳三さんと、同僚の沖田総司さんだよ~」
「豊と申します」
丁寧に頭を下げた豊を見て、土方と沖田は顔を見合わせた。
本当に山崎とこの少女は血縁関係にあるのか?
見るからに大人しそうで、清楚を体現しているような少女と、"あの"山崎が?
「ちょっと~?お二人とも今なにか失礼なこと考えませんでした~?」
スーパー監察の目は誤魔化せないようだ。
土方は咳払いをひとつすると山崎に向き直る。
「オホン。ま、まぁ、なんだ……お前にこんな可愛らしい妹がいるなんて知らなかったよ」
「可愛らしい、ねぇ…………まぁ、土方さんには言ってませんでしたしね~」
「僕も知りませんでした」
「沖田さんにも言ってませんし~」
「あ?じゃあ誰が知ってんだよ」
「さぁ……自分のことなんて聞かれなきゃ話しませんもん~。でも島田さんには話したかもしれませんね~。あと源さんも知ってるかも~」
それと、と山崎は当然のように言う。
「近藤さんも知ってるはずですけど~」
「俺は近藤さんのみならず、源さんや島田にまで何かで負けたのか……」
「色々あると思いますけど一番の敗因は人徳じゃないですか?いてっ」
土方は沖田を殴って黙らせた。
「で?お前はこんなとこで妹捕まえて何してたんだ」
「あ~…………」
山崎は視線を逸らして言葉を濁す。
あまり話したくないことのようだ。
「説教ですよ」
凛とした声が響いたので、沖田は視線を豊へ向ける。
「説教……ですか?」
豊はむっと頬を膨らませて腰に両手を当てている。
「そうです。お説教されてたんです。私が」
山崎は気まずそうに肩を落として目元を押さえた。
「豊さん、何かやらかしたんですか?」
沖田は興味津々だというような、とても楽しそうな顔をして聞いた。
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